現在のJR東海の中央線、高蔵寺駅から多治見駅の間は複線の電化されたトンネルが通っていますが、1961年までは庄内川沿いを幾つものトンネルを抜けて鉄道が走っていました。それがこの愛岐トンネル群。いつしかこの愛岐トンネル群は廃線とともに忘れられた存在となってしまいましたが、この歴史のあるトンネルを後世へ伝えていこうという活動が起こりました。そんな活動をされているNPO法人の方々の努力で年2回、春と秋にこれらの愛知県側のトンネル群を間近で見ることができます。
というわけで今回は、その秋の特別公開で行ってきた時のお話をチラッとご紹介。
愛岐トンネル群へは定光寺駅が最寄り駅
現在、春と秋にこの愛岐トンネル群は一般公開されているこの愛岐トンネル群。定光寺駅から200m程多治見側へ進んだ所に入り口があります。特別公開日には多数のNPO関係者さんやボランティアさん(?)が案内して下さいますので迷うことはないです。
駐車場がないので、JRで定光寺駅へ向かいましょう
この辺りにはまともな駐車場もありません。なのでJRで行くことをオススメします。またこの定光寺ですが、定光寺駅前の廃屋に放火される事件が発生したりと、ちょっと物騒な場所だったりします。愛岐トンネル群の公開は昼間だけ(15時まで)なのでそういう意味では問題ないですが、そんなところには駐車はせずに電車で行きましょう。
持ち物は、懐中電灯と靴底がしっかりした靴がオススメです
配線となったトンネル内は、一部LEDでライトアップされてはいますが、それでもすごい暗い中を進む必要があります。※写真は明るく写っていますが実際はもっと暗くて、最長の6号トンネルはほぼ真っ暗です。なので小さくても良いので
- 懐中電灯
を持っていくのをおすすめします。
また廃線上には砂利が敷き詰められたままになっていますので、
- スニーカー以上の靴底がしっかりした靴
を履いて行かれると楽できます。逆にハイヒールは絶対だめです、怪我しますよ!
こんにちは。2014年11月22日、JR勝川駅へやって来ました。勝川駅で車を駐めさせてもらい、ここから愛岐トンネル群が公開されている最寄り駅の定光寺駅まで向かいます。
ところでこの勝川駅、高架化されて駅前もすごい綺麗になったのですが、城北線とはいまだにつながっておらずホームの真ん中にポッカリとスペースが開きっぱなし。
ま、つなぐ気がないんでしょうね。同じJR東海のグループ会社なのにね。
電車を待っている間、特急しなのがものすごい勢いで通過していきました。先頭車両に乗ってみたいな。
そして目的の多治見行き普通列車が到着。定光寺駅までのんびり各駅停車です。とはいっても定光寺駅まで他3駅しかないですけどね。
そしてほどなく定光寺駅に到着。意外にもたくさんの人が降りてきました。
定光寺駅を降りて庄内川沿いへ。もうすでにいっぱい人がトンネル群に向かって歩いてるのが見えます。
ようこそ産業遺産愛岐トンネル群無料公開日って、昔は無料だったんだ…
往復3.4kmでコースタイムは2〜3時間。まぁまぁ時間かかるのかな?こんなもんか。
この玉野堰堤は、尾張地方唯一の水力発電用に大正10年に作られた堰堤で、この水は玉野用水を伝って灌漑のためにも流用されているそうです。戦前から頑張っているんですね。
愛岐トンネル群の入口の手前からは廃線跡が見えます。もう苔むして自然に帰ってしまったような。
そして足元にあるこの滑車は、昔の腕木式信号機のワイヤーのための滑車なのだそうです。さ、それでは産業遺産の愛岐トンネル群へ向かいましょう。
そして途中からは、埋もれていた枕木を階段に流用しているのですが、
階段を上がったらいきなりトンネル!これが愛岐トンネルなのかぁ。これは3号トンネルだそうです。ちなみにここで入場料100円をお支払いしますよ。
トンネルの天井のレンガが煤けているのかな?だいぶんボロボロなんですが大丈夫かな(^_^;)
トンネルの中にもう一つのアーチ。これは何のために作られたのでしょうか、通り抜けられるようにも作られていないし。
そこには落石防止柵が。よく見ると線路を流用して作られているようでした。しかしもう落石を防止してくれそうにはありません(汗
この落石防止柵にはこのような刻印があります。これはドイツのクルップ社製で1903年製、山のマークは山陽鉄道ということがわかるそうです。
刻印は他にアメリカ製だったり国産のだったりと、本当は錆びてしまっているのですが、わかりやすくなるようにペイントして下さっています。
そしてここには、埋もれていた犬釘や碍子なんかも展示されていました。
4号トンネルにも横穴でしょうか、謎のアーチの構造物。本当に何の目的で作られてたのでしょうか?
左側には比較的新しい感じのする木表札がありましたが、書いてある内容は判読できません。
途中の法面に1958-2の文字が。1958年製ということかな?
そして愛岐トンネル群の看板のところに来ました。お昼14時くらいからは、販売されているお弁当が500円→250円になっていました。ご家族連れの方は、この遅めの時間狙いでどうぞ。
お?暗渠を見られるルート?お兄さまに伺ったところ、川沿いを定光寺駅へ戻るもう一つのルートで、そのルート上に暗渠があるそうです。定光寺駅方面への一方通行ということなので、帰りにこのルートへ行くことにしましょう。
トンネルの入口とそれ以降では、トンネルの作りが違っていました。入口両方付近はレンガなのですが中央部分はコンクリート(?)の天井になっていました。
コンクリート製トンネルでは、このコンクリート鍾乳石。定番ですね。
そしてこの愛岐トンネル群の最長トンネルである6号トンネル。公開されているトンネルの中で最長のトンネルで長さが333メートル。東京タワーと同じだ。
地盤が脆弱なこの6号トンネルの春日井側は、7重の入口のアーチでレンガを積んだり、
普通は地面上にレンガを組んでトンネルをつくるのですが「インバート」と呼ばれる地中にもレンガを組むことで円状にしてトンネルの強度を高める工夫をしているそうです。
その6号トンネルの入口には、レンガを製造した会社がわかる刻印の残っているレンガが展示されていました。
レンガの積み方、イギリス式・フランス式などは鉄腕ダッシュでやっていたなぁ。
さすが333mもあって、しかもゆるやかにカーブしているトンネルなので光が入ってこない。ホントここだけは懐中電灯を持って来ればよかったと後悔(^_^;)
この愛岐トンネル群の特別公開はここまで。ここでそのままUターン、ちょっと寂しいな。
この川が愛知県と岐阜県の県境になっています。この先の多治見まで7基のトンネル(7号〜13号トンネル)があるとの事です。この愛岐トンネル群の特別公開を行っているNPO法人がこれらトンネル群の買収を表明しており、買収に向けて頑張っているそうです。
そしてこれが暗渠。山側の湧き水を庄内川へ排水するために作られた暗渠だそうです。
この辺りの石垣は明治時代だと思うけど、それにしてもよく積んだなぁ。
当時、これらのトンネル工事では多数の殉職者を出したそうです。
そんな愛岐トンネル群は1966年に現在の中央線が開通したことによって廃線、放置されて人々から忘れられていたそうです。
弔いといったら大げさかもしれませんが、そんな歴史が再び日の目を見るというのは良いことじゃないでしょうか。
ちょっとゆっくり歩きすぎて3時間あまりブラブラして日が陰っちゃった。定光寺駅へ戻りましょう。
定光寺駅には普段は快速は停まらないそうですが、今日は特別公開の日ということで、臨時停車してくれました。
そして勝川駅へ戻ってきました。
今では長いトンネルをすごいスピードで走り抜ける中央線の愛知県と岐阜県との県境。そのほんの少し脇には廃線が佇んでいました。近代化産業遺産として登録されているこの愛岐トンネル群は、春と秋に特別公開されます。次は春なので、新緑の季節になるのかな、是非一度お立ち寄り下さいませ!
【関連リンク】NPO法人愛岐トンネル群保存再生委員会